ラスコー洞窟について(3)太古の夜空
ラスコー洞窟の壁画
「有名なラスコー洞窟(フランス)の壁画に星が描かれているのが発見された。この研究が正しければ最古 の星図の発見である」と2008年8月11日 BBC Newsに発表があった。
ラスコー洞窟はフランスの西南部ドルドニュウ県ヴェセール溪谷のモンティニャク村の近郊に位置する洞窟である。
先史時代(オーニヤック文化)の洞窟壁画である。
洞窟の上半分一帯には、数百の馬、山羊、羊、野牛、鹿、カモシカ、
人間、幾何学模様の彩画、刻線画、顔料を吹き付けて刻印した人間の手形が500点もあった。これらは16、500年前の氷河期の旧石器時代後期のクロマニヨン人の人々の手によって描かれていた。
ここには牛や馬、カモシカなどが描かれているが、この壁画に「夏の大三角」と思われる明るい3つの星の並びと「プレヤデス星団(すばる)」と思われる星の並びが描かれているのが発見された。
ドイツ・ミュウヘン大学Michel・Rappengluek博士によると壁画に書かれている「牛の目」、「鳥人間」、「棒の上の鳥」が、それぞれ「ベガ」、「デネブ」、「アルタイル」を意味しているのだという。
この3つの星は現在では、北半球の夏の夜空で最も目立つ星たちであり
、「夏の大三角」として良く知られている。
しかし、17,000年ほど前は地球の歳差運動による地軸のずれから
この3つの星はつねに地平線上にあり、初春の夜に最も高く登る星たちであった。
プレヤデス星団を表すと思われる点の並びは、ラスコー洞窟の入口付近に描かれている、格調高い牛の絵の肩のすぐ上に描かれている。
更に、その牛の絵の内部にはプレヤデス星団の付近にある星たちを意味すると思われる部分がある。現在では夜空のこの領域は「牡牛座」として知られている。
人は遥かな太古から、夜空のこの領域に牛の姿を思い浮かべてきたのだ。
そして博士は、スペインのある洞窟に描かれた壁画にも星の並びを意味する絵を発見している。
この洞窟はCueva de El Castillo洞窟で、14,000年ほど前に描かれたと思われる壁画が残っている。
この壁画に、曲線上に並んだ星が描かれているが、博士によるとこの点の並びは現在の「かんむり座」と呼ばれる星の並びを意味するのだという。
博士の結論を知った他の考古学者たちは、今のところ、この博士の解釈が
合理的だと認めている。
博士は太古から人が夜空の星に思いを寄せていたということを発見したのだ。