カイパーベルト1 Wikipediaより
オランダの天文学者カイパーは1950年,太陽系のはずれ,つまり海王星と冥王星の軌道の外側に平たい小天体の巣があるというアイデアを提案した。このカイパーベルト仮説は長い間顧みられなかったが,80年代になると,地球の軌道面とほとんど同じ軌道傾斜角を持つ短周期彗星の起源を説明するものとして注目が集まった。
著者たちはこの仮説を証明するため,1987年からハワイのマウナケア山上にある大望遠鏡による探査を始めた。大望遠鏡に電荷結合素子(CCD)を取り付け,連続撮影した画像をコンピューターによってチェックし,移動する暗い「星」を見つける手法である。ようやく,6年目にして,冥王星の向こうにあるカイパーベルトに属する天体を発見した。この種の天体はこれまで40個ほど見つかっており,その直径は100kmから400kmとごく小さい。それでも,カイパーベルトには3万5000個以上の天体が存在し,総質量は小惑星帯にある天体の数百倍にのぼると見積もられている。
最近の研究によると,カイパーベルトは彗星だけの供給源ではないという見方が出てきた。海王星のまわりを“逆行”する衛星トリトンは,カイパーベルト天体だった形跡がある。冥王星の軌道は海王星と特殊な共鳴関係にあり,海王星の重力がカイパーベルト天体を今の軌道に押しやった可能性がある。著者たちは,このような共鳴関係を持つ小天体は100以上あるとみている。カイパーベルトは太陽系の外縁部の概念を変えるかもしれない。
著者
Jane. X. Luu / David C. Jewitt
ルーとジューイットは,かなり異なる経緯で天文学研究に入ってきた。ジューイットにとって天文学は,英国の少年時代に情熱を投じたものだった。ルーの幼少時代は,もっと現実的な不安にさいなまれていた。というのも,彼女はベトナム難民だったからだ。彼女は,英会話を覚えなくてはならず,その生活をカリフォルニア南部のスタイルに合わせなくてはならなかった。彼女が天文学に魅了されたのは,ほとんど偶然だった。夏期休暇中にパサデナにあるジェット推進研究所に滞在したのが,そのきっかけである。 ルーとジューイットは1986年から,マサチューセッツ工科大学(MIT)で共同研究を始めた。ジューイットはそこの教授であり,ルーは大学院生だった。1988年には,ジューイットはハワイ大学へ移った。ルーとジューイットが最初のカイパーベルト天体を見つけたのは,ルーがハーバード・スミソニアン天体物理センターで,ポスドク研究員をしている時である。1994年,ルーはハーバード大学の教官になった。