ギリシア神話
口承から文字記録へ Wikipediaより
オリュンポス十二神
口承でのみ伝わっていた神話を、文字の形で記録に留め、神々や英雄たちの関係や秩序を、体系的にまとめたのは、ホメーロスより少し時代をくだる紀元前8世紀の詩人ヘーシオドスである。彼が歌った『神統記』においても、その冒頭には、ヘリコン山に宮敷き居ます詩神(ムーサ)への祈りが入っているが、ヘーシオドスは現存する文献のなかでは初めて系統的に神々の系譜と、英雄たちの物語を伝えた。このようにして、彼らの時代、すなわち紀元前9世紀から8世紀頃に、「体系的なギリシア神話」がギリシア世界において成立したと考えられる。
それらの神話体系は地域ごとに食い違いや差異があり、伝承の系譜ごとに様々なものが未だ渾然として混ざり合っていた状態であるが、オリュンポスを支配する神々が誰であるのか、代表的な神々の相互関係はどのようなものであるのか、また世界や人間の始源に関し、どのような物語が語られていたのか、などといったことは、ギリシア世界においてほぼ共通した了解のある、ひとつのシステムとなって確立したのである。
しかし、個々の神や英雄が具体的にどのようなことを為し、古代ギリシアの国々にどのような事件が起こり、それはどういう神々や人々・英雄と関連して、どのように展開し、どのような結果となったのか。これらの詳細や細部の説明・描写などは、後世の詩人や物語作者などの想像力が、ギリシア神話の壮麗な物語の殿堂を飾ると共に、複雑で精妙な形姿を構成したのだと言える。
次いで、ギリシア悲劇の詩人たちが、ギリシア神話に奥行きを与えると共に、人間的な深みをもたらし、神話をより体系的に、かつ強固な輪郭を持つ世界として築き上げて行った。ヘレニズム期においては、アレクサンドリア図書館の司書で詩人でもあったカルリマコスが膨大な記録を編集して神話を敷衍し、また同じく同図書館の司書であったロドスのアポローニオスなどが新しい構想で神話物語を描いた。ローマ帝政期に入ってからも、ギリシア神話に対する創造的創作は継続していき、紀元1世紀の詩人オウィディウス・ナーソの『変身物語』が新しい物語を生み出しあるいは再構成し、パウサニアスの歴史的地理的記録やアプレイウスの作品などがギリシア神話に更に詳細を加えていった。
と書かれておりました。